男の旅は一人旅 伊予讃岐編 2

内子から道後温泉へ
八幡浜から特急で30分、内子駅に到着。ここは江戸期に木蝋づくりで栄えた町で、
その面影を今に伝える街並みが保存されている。街並み以外にも大江健三郎の
出身地である大瀬地区にある大瀬中学校(原広司設計)という見所があるが、
土曜日は大瀬行バスが運休とのこと。あきらめて徒歩15分の街並保存地区へ向かった。
まずは腹ごしらえ。「魚林」の鯛めしがお目当てだったのだが、運悪く俺の直前に
入店した13人のおっちゃんおばちゃんが鯛を食い尽くしてしまった。
しかもばら寿司まで枯渇してしまったようだ。1人前だけこっちにまわしてほしかったが、
しかたなく生ビールとざるうどんを注文。かなりブルーになっていたが、
このうどんがめっぽううまい。うどんが歯を押し返してくる。伊予のうどんも
讃岐に劣らずレベルが高いようだ。
さて、古い街並みをそぞろ歩くと酢卵なるものを発見。卵を酢に漬け込んで
カラもろとも溶かし込んだもので、ぜんぜんなまぐさくなく、さっぱりさわやかな味だ。
内子町にしかないと書いてあるが、自宅では作れないのだろうか。一度挑戦してみたい。
街並みの中には、彫刻やナマコ壁がかなり凝ってる蔵もあって、なかなか
繁栄した町だったことが伺える。しばらく歩くと散歩道の最奥に高昌寺という寺があって、
100円で1センチ角の金箔シールを買って石仏に貼りつけるというのがあって
とりあえず貼っておいた。仏像の表層、文字どおりスキンのランダムな粒子化である。
最後に立寄ったのが内子座。現在も劇場や寄席として使われている芝居小屋だ。
桝席、2階席、奈落と隅から隅まで公開している。入館300円。
この日は舞台でおばちゃん4人が踊りの稽古をしてた。
この町には2時間ほど滞在した。なかなかいい散歩コースだ。
同じ古い街並みでも高山や木曽ほど観光地化してないのもよい。
あとは住んでる人の生活がかいま見えること。やっぱり博物館的に保存されたら
その建築はもう終わりで、使われながら保存されてなんぼである。
今思うと、この町は車で来るのが良い。そうすれば大瀬中学も屋根付橋も
棚田も見る事ができる。怨むべきは鯛めし。観光地の団体客には要注意だ。

内子から特急しおかぜで30分、松山駅に到着。即路面電車に乗り込んで道後温泉へ。
下見板張り西洋館風の道後温泉駅は白のベースにモスグリーンをアクセントにしていて、
オレンジ色の電車とのコントラストが絵になる。さっそく道後温泉へ。
道後は言わずと知れた四国一の名湯で有馬、白浜と並ぶ日本三古湯のひとつ。
道後のシンボル・道後温泉本館は温泉施設として初の重要文化財。てっぺんにある
太鼓を打ち鳴らす小屋のガラスは赤で、屋根の上には白鷺。「道後温泉」の看板がかかる
玄関の唐破風は堂々たる風格で、その下には日傘をさした「マドンナ」の格好の
女の子が2人いた。本館には、大衆浴場的な「神の湯」と、料金がやや高めで
小人数でゆっくり入れる「霊の湯(たまのゆ)」の2つの湯があり、休憩所として
お茶・せんべい付の2階席、お茶・団子付の3階個室がある。
霊の湯3階個室を希望したが満席。やむなく霊の湯2階席にした。2階に上がると、
浴衣と赤タオルの入ったお盆が並んでいて、ここで浴衣に着替えて下の浴室に行く
システムになっている。まず霊の湯へ。小さな脱衣所で浴衣を脱ぎ、こじんまりとした
浴室に入ると浴槽は石づくり。温泉熱で床の石もぽかぽかだ。石でできた
タンクみたいな2つの湯釜から湯が注がれている。浴槽の縁は曲面で、
つるつるに磨かれていた。掛け湯をすると、熱い。湯につかるとじわじわと
熱さが身にしみる。湯から唯一出ている顔の部分に行き場を失った体中の熱が
集中してきて、頭がでかくなりそうな錯覚を覚える。湯は無色透明で、
泉質はアルカリ性単純泉。Ph9.4のわりにぬるつきがもう一つかなと思ったが、
熱くてふーっと浴槽からあがってもしぶとく体に湯がまとわりついている。
なんだか底力を感じる湯だ。とにかく熱い。いったん出て、
「坊ちゃん」が泳いだという神の湯に行くことにした。神の湯には東の湯と
西の湯というのがあって、どちらも同じつくりになっているみたいなので東の湯へ。
浴槽は霊の湯より広く、カランの数も多い。湯釜は中央にでかいのが一つ。
こちらの湯も熱い。しぶとく熱い湯に坊ちゃんの気分を味わえたが、
長湯できずにまたでてきた。銭湯みたいな和気藹々とした
脱衣場で体を冷まし、再び霊の湯へつかって2階にあがった。
お茶と煎餅がもらえるのがうれしい。湯上がり後のつるつる感はさすがの名湯だ。
ほかほかの体がいい感じに冷めてきたところで、坊ちゃんの間というのを見て、
ひとまず宿へと向かった。

道後温泉から歩いて今日の御宿、道後やすらぎ荘へ。予約の時は知らなかったのだが、
着いてみるとトラック協会保養施設とあり、協会加入者は安く利用できる
トラック野郎御用達の宿だった。部屋は「石出」。四国第51番札所・石出寺に
ちなむ室名だ。石出寺は風格ある三重の塔と国宝の門で知られる名刹だが、
札所巡りはまたの機会にすると決めていたので行かなかった。3階にある部屋は
和室で窓からは山と庭が見えて悪くない。今回は一泊朝食付でお願いしているので、
外に晩飯を食べに行くことにし、ふたたび道後の商店街方面へ。飯の前に
本館から商店街を通って反対側のもう一つの共同湯・椿の湯に行くことにした。
観光客の多い本館に比べ、地元の人の利用が多いらしい。受付や脱衣場はどっかの
ホテルみたいな感じなんだけど、浴室は本館・神の湯に似ていた。
中央に大きな湯釜がひとつ。天井が高く、壁には白鷺の絵が描いてある。
道後というとまず本館、という感じだが、椿の湯も浴室に関しては本館に負けてない。
湯の熱さはあいかわらずで、ざぶっとつかって出てきた。次は腹ごしらえ。
椿の湯の真ん前にある奴寿司に突撃した。前髪が濡れてるうちに生ビールを注文。
たてつづけに2杯飲む。1800円の松の握りを食べた。うまい。まともな寿司屋で
おやじもいい人だったが、Tシャツで首にタオルをかけて一人で寿司屋、というのが
なんとなく居づらくなってきて店を出た。奴寿司のとなりは大人のおもちゃ屋で、
向こうにはストリップ劇場が見える。いかにも温泉街だなー。
まだ胃袋に余裕があったので、商店街の中のうどんや・道後亭で温かい
ぶっかけうどん650円を食べた。コシがあってうまい。お腹が満足したところで
御宿に帰還。帰り道の土産物屋で一六タルトとみかん100%ジュース
「とれたて搾り」を購入。宿での湯上がりに飲むことにした。

宿の風呂は元湯から引湯しているとのこと。赤御影石の浴槽で、白く変色してるのは
温泉成分によるものかもしれない。湯は本館よりはややぬるめだが、湯の肌触りはよい。
でもやっぱり本館のほうがありがたみがある。しばらくつかっていると、
大柄なごつい男が4人乱入してきた。職業はトラック野郎にちがいない。
思わず菅原文太の気分になって、「男の旅は〜一人旅〜」と映画・
トラック野郎のテーマが頭のなかに流れてきた。
部屋に戻ると、おなかいっぱいだったけどみかんジュースと一六タルトを5個食べた。
タルトはちょっとゆず風味でうまかったが、5個たてつづけは少々きつかった。
食べてるところを三脚たてて記念撮影した。撮影後なんとも言えないわびしさに襲われた。
実家の母に、松山の土産ってお菓子ばっかだから何も送らないとメールで明言して床に就いた。
翌朝6時に起きて朝風呂。もう4人も入っていた。トラック野郎の朝は早い。
食堂で朝食。温泉卵がうまくて半泣きになった。宿をチェックアウトし、
路面電車で松山駅へ。8時13分の特急いしづちで向かう先は伊予西条である。

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