男の旅は一人旅 那須塩原編 4

塩原の温泉街から蛇行する山道を車で30分、奥塩原・元湯温泉に到着。
まずは元泉館で立ち寄り入浴。秘湯の宿ということで鄙びた建物を勝手に想像していたのだが、
RCの思ったより大きな旅館で入浴料は800円。日帰り客が入れるのは高尾の湯という源泉で
内湯と露天がある。木で縁取られた浴槽に熱い源泉が掛け流し。黄緑色の濁り湯で硫黄臭、
なめると苦まずい。硫黄のたまらなくいい臭いが立ち上り、恍惚状態。露天に出てみると、
渓流に面した岩風呂。どうやら湯は内湯から流れているようで温度はぬるめ。
足を踏み入れると沈んでいた黄色く細かい湯の花が舞った。臭いがよく温度もよく景色もいい。
のんびりと50分ほど長湯した。この宿は宿泊客しか入れない邯鄲(かんたん)の湯という
別源泉をもっている。次回はぜひ宿泊で利用したいと思った。

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外観             露天風呂

続いて元泉館のすぐ隣にあるえびすやで湯を乞う。受付開始の10時に行ったのだが、
もう3組ぐらい立ち寄り客が来て待っていた。入浴料は500円。
この宿は塩原最古の源泉・梶原の湯と間欠泉から湯を引いた5分おきに出たり止まったりする
弘法の湯の2つの源泉をもつ。板張りの鄙びた浴室に入ると上品な硫黄臭が立ちこめている。
女湯から入ってこれる通用口があったが、もちろん女性が入ってくるわけがない。
浴槽は木製で、白濁した梶原の湯と黄緑色の弘法の湯の2槽式なのだが、
先客は全員梶原の湯に入っている。梶原の湯は5人ほどが入って浴槽はいっぱい、
俺の入る余地はなかった。そこで竹筒の湯口から猛烈な勢いで源泉が注がれ、
白い析出成分でものすごいことになっている弘法の湯に足をつけてみるとめちゃめちゃ熱い。
どうりで誰も入れなかったというわけだ。断腸の思いで加水し45℃くらいまで下げて入湯。
硫黄臭でものすごく苦まずい。しばらくすると湯口の湯がぴたりと止まり、
5分ほどたつとまただばだばと湯が出てくる。間欠泉を引いているなんてなかなかおもしろい。
ガツンとくる男性的な湯で、熱いので長くつかっていられない。
今度は梶原の湯につかってみるとこれが40℃くらいなので水風呂のようにぬるく感じる。
硫黄臭苦味。やわらかく上品な女性的な湯でいつまでも入っていられる。
どちらもかなりレベルの高い湯だ。元湯温泉では一番ここが気に入った。

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外観

続いて少し離れたところにある日本秘湯を守る会会員旅館・大出館で立ち寄り入浴。
玄関前にいた若い男性の対応が気持ちいい。ここの若主人かもしれない。
受付で600円払いエレベータで下階へ降りる。かなりたくさんの人が来ていたが
ほとんど露天風呂へ入っているようだ。俺のここでのお目当ては内湯。
この宿も2種類の源泉をもっている。まずはここの名物・墨湯に入る。墨湯といっても
真っ黒な湯ではなく色はグレー。灰色の細かい湯の花が舞い、底には真っ黒で大ぶりな
湯の花が沈んでいる。硫黄臭で苦味。長野県高山村の五色温泉露天風呂に似ている。
湯からあがると体に黒い湯の花が付着していてなんだかおもしろい。
この墨湯は女湯には引かれていないらしく、時々おばさんが入ってきた。
隣の浴槽には別源泉の五色の湯が満たされている。黄緑色の湯で硫黄臭、すごく苦まずくて
熱い湯だ。露天風呂にはこの湯が引かれているとのこと。この墨湯と五色の湯も
塩原でぜひ押さえておくべき湯だと思う。この湯で先ほどのえびすやで一緒だった人にまた会った。
お互い元湯をはしご湯していたようなのでここまではよくある話だが、さらに昨日
高雄温泉露天風呂にいた人にも会った。世の中せまい。
余談だが以前四万温泉で知り合った温泉旅館マニアのおっさんがこの大出館に宿泊した際、
「お口にあわないようなら無理に食べなくていいです」と言われて出された食事がものすごくまずく、
一品も食べられなかった経験があると言っていた。今はどうだか知らないが、
宿泊利用の際は綿密なリサーチが要るようだ。
それはさておいて元湯温泉の元泉館・えびすや・大出館というかなりハイレベルな湯に
3つ続けて入湯しおおいに気をよくした。
このインパクトは85年阪神のバース・掛布・岡田のバックスクリーン3連発に匹敵するだろう。
墨湯につかりながら、俺の頭の中にはなぜか六甲おろしが鳴り響いていた。

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外観

ここで昼食をとることにした。元湯温泉の山道から幹線道路にでてきたところにある蕎麦屋・
延四郎に入った。貼り紙には一日限定30食の手打ちそばとある。ざるそばを注文すると、
わりと黒ずんだ、太さも長さもふぞろいな田舎風のそばがでてきた。俺はそば通ではなく
そばの味などわからないが、はごたえもしっかりしていて美味しくいただいた。
すっかり塩原温泉を満喫した俺は塩原を離れることにし、予習してこなかったのだが
喜連川(きつれがわ)温泉をめざすことにした。1時間程走ってかんぽの宿栃木喜連川温泉に到着。
日帰り館で立ち寄り入浴。タイルのきれいな内湯と露天風呂がある。
含硫黄-ナトリウム-塩化物泉で成分総計6.9g。黄色透明おがくず臭、おかくず味+塩味。
三重県北部の温泉に似ていると思った。さっぱりして湯からあがり、喜連川町を後にした。
後でわかったのだが、喜連川の街中には硫黄の存在感バリバリの濃い湯をもつ施設がいくつかあるという。
知らなかったとはいえそれらを素通りしてきたとはもったいないことをした。やはり予習は大切だ。

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外観

さらに30分ほど車を走らせ馬頭温泉郷へ。ここも予定になく思いつきで来たのでなんの予備知識もない。
とりあえずぼろそうな旅館をさがし、広瀬温泉・山木館で立ち寄り入浴した。
浴室は内湯がひとつあり那珂川への展望良好。分析表によるとアルカリ性単純温泉で
PH9.8というところにかなり期待したのだが、ぬるぬる感はそれほどでもなかった。
無色透明無味無臭の循環湯。湯に浮いているのは湯の花なのかゴミなのか不明。
はっきりいってここははずれだった。

この近くには、なかがわ遊水館という古市徹男設計の施設があるのだが興味がなかったので素通り。
だがこれは見ておきたいという建物もあった。馬頭町広重美術館。設計は隈研吾である。
壁も屋根も木製タテルーバーで覆われた広重美術館。木は日に焼け雨にさらされだいぶ白くなっていた。
建物を一発広いアプローチが貫通してヴォリュームを1対4くらいに2分しており一方が美術館棟、
一方がカフェ等、それを切妻の大屋根が結びつけるわかりやすすぎる構成だ。
外からはあまり目立たないが、軒を見上げたときの鉄骨の梁はやっぱり気になった。
それはさておき建物の全体的なことよりも細かいアイテムがこじゃれていると思った。
家具、ブラインド、トイレピクト、洗面、屋外休憩所などなど。関係ないが北斎や写楽のグッズが
たくさん売られているのは気に入らなかった。ちなみにここのデジカメ画像は
ほとんどピンボケしていてショックだった。

これで那須塩原の旅も終わった。初めて訪れた栃木県はかなり侮れない県だった。
しかし那須塩原と銘打っておきながら弁天温泉や板室温泉を外しているのは片手落ちといわざるを得ないし、
栃木にはまだ日光・奥鬼怒・湯西川といった攻略ポイントも残されている。
宇都宮のギョウザも食べてないし佐野のラーメンも食べてない。
やり残したことの多すぎる俺はまだまだ栃木に来る気満々である。おわり。

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