男の旅は一人旅 下北編 2
下風呂温泉からしばらく北上すると、海岸沿いの高台に桑畑温泉がある。小学校の跡地に新しい木造の
建物がつくられ、施設名は「湯ん湯ん♪」。タイル浴槽に満たされたナトリウム・カルシウム-塩化物泉の
黒っぽい湯は塩味と苦味が混じりあい、なんだかアプラ粘土みたいな臭い。じっくりあたたまった後で
外に出てみるとベンチが置いてあり、津軽海峡の向こうにきれいに北海道が見えた。

桑畑温泉浴室 海の向こうには北海道
桑畑温泉からさらに北上して大間町に入り、北緯41度33分、本州最北端の岬・大間崎へ到着。
「ここ本州最北端の地」の碑の向こうには津軽海峡。マグロ一本釣りで有名な大間だけに、
マグロ漁船がたくさん浮かんでおり、かなたには北海道も見える。

本州最北端の碑 最北端到達!

北海道も見える 大間といえばマグロ
たくさんの土産物屋をうろついていると「すぐ食べれる大間産活うに」という看板を発見。食うしか
ないでしょ。1個500円の大きなウニを注文すると、おっさん、水槽からウニを取り出してバリバリっと
ハサミでウニの頭を切り取った!そのまま皿に乗せてテーブルへ。オーイ、まだウニのトゲ動いとるやんか!
殻の中に5粒入っているオレンジ色の身をスプーンですくって食べると、うまい!そんで甘い。
ここでしか食べられない味に大満足だ。

生きたままのウニをパクリ!
さらに徘徊を続けると、店先で巨大なマグロの頭を網に乗せてバーベキューやっとる!店の人が
マグロバーベキューを無料でふるまってくれていたのだ。それにしても豪快、マグロを切り身でなく
一本モノで仕入れないとできない芸当だ。 食べてみると、これは魚っていうよりもう肉やね。うまい!
そろそろちゃんと昼飯を食べたくなって、「マリンハウスくどう」という食堂へ。注文したのは
もちろんマグロ丼。でてきた丼を見てびっくり、ドンブリの上にマグロの花が咲いとる!
赤身とトロの部分でうまいことバラのように盛り付けられている。一心不乱にかきこむと、うまい!
でらうまである。とけるような舌触り、味がいいのはもちろんだが、マグロの香りがいい。
一緒についてきたイカの塩辛がまたうまい。

豪快!マグロバーベキュー うまいの一言!マグロ丼
大間崎で食べに食べた後は、本州最北端の温泉・大間温泉海峡保養センターへ。浴室は広く、滝のような
風呂やすべり台付きの風呂もあり、なんだかレジャーランドみたい。なんでだよ、と言いたくなるような
動物の遊具もあり、くたびれた施設と相まってなんだかシュールな雰囲気を醸し出している。ひときわ
インパクトのある茶色い湯を見つけるとそれは源泉浴槽。46℃の高温に歯を食いしばって入る。
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉の湯は強い塩味と苦味、そして体がじんじんする熱さ。ぷはーとあがり、
水風呂へ直行。源泉と水風呂を何度も往復していると、あまりの気持ちよさに血の回りが良くなりすぎて
頭クラクラしてきた。もう倒れそうだ。

大間温泉源泉浴槽 なんだかシュール
大間から今度は下北の西海岸を南下する。佐井村に入り、国道から脇道へ逸れ、未舗装の砂利道を
しばらく走るとひょっこりピンク色の外壁の建物が見えてくる。これが千金温泉の共同浴場だ。
営業開始の20分ほど前に着いてしまったが、おっさんが快く入浴許可してくれた。湯船には激熱の
源泉が満たされたところで、これから温度調節をするところだったらしい。そこへフライング気味の
客が来たもんだからおっさん、大急ぎで水を投入、シャモジの親分みたいな湯もみ板で湯をざばざば
かき混ぜ始めた。オイオイ、そこまでせんでも、ってくらい頑張って温度を下げてくれたので、
すぐに入ることができた。タイル浴槽に掛け流される湯はナトリウム-硫酸塩・塩化物泉。ほんの少し
黄色がかった透明で熱めの湯。営業前の誰もいない湯船でのんびりとつかることができた。

千金温泉外観 浴室
千金温泉からさらに国道338号線「海峡ライン」を南下する。海峡ラインという名とは裏腹に、
曲がりくねった山道を進むと、ようやく仏ケ浦に到着した。仏ケ浦は、自然の荒波・風雨に現れた
白い凝灰岩の怪岩・奇岩が海岸線約2キロにわたって続く下北国定公園きっての景勝地。
駐車場に車を停めると、ここから岩の連なる崖下の海岸まで延々とつづら折りの下り道が続く。
その下り始めにいきなり「熊出没注意!!」の看板。オーイ、そんなコワイとこ歩くんかよ。
おそるおそる歩いて海岸に着くと、異様な世界に迷い込んだような風景。巨岩にはその形から
五百羅漢、屏風岩、如来の首、一つ仏といった名前がつけられた大自然の造形に圧倒される。

仏ヶ浦俯瞰 熊出るんかよ!

奇岩の続く風景
海岸線の道から東へ進路を変え、佐井村から川内町へ。下北の内陸部へ向かうその途中で
道の駅・かわうち湖に立ち寄ることにした。かわうち湖は山に囲まれた本州最北のダムであり、
湖のまん中から噴水があがっていた。せっかく寄ったので、川内町の郷土料理「ケイラン」を
食べていくことにした。出てきたものはドンブリの冷たい醤油ダシの中に鶏の卵のような白くて
丸いモチ。かぶりついてみるとこれがアツアツの大福餅。最初は醤油ダシにつけなくても大福だけで
食べればいいじゃねえかよと思っていたが、あんの甘さと醤油のからさの取り合わせが意外と違和感ない。
このケイラン、漢字では見た目どおり「鶏卵」と書く。かつて貧しかった百姓にとって卵はぜいたく品で
とても食べられなかった。そんな百姓たちが大福餅を卵に見立ててお祝い事の料理として食べ始めたのが
ケイランの起源らしい。百姓たちにとってはこのミスマッチな味がこのうえないご馳走だったのだろう。

かわうち湖 ケイラン
ちょうどいいおやつを食べたところで、もう少し東へ進み、湯野川温泉に立ち寄っていくことにした。
湯野川温泉は映画「飢餓海峡」の撮影が行われた地として知られているらしい。「飢餓海峡」って
どんな映画かよく知らないが、原作は水上勉の社会派推理小説、主演は三國連太郎、高倉健。映画も
原作もなかなか高い評価を受けているらしいのでぜひ一度見てみたいところだ。さて、ここでは町営の
入浴施設「濃々園」(じょうじょうえん)の湯に入ることにした。ヒバづくりの内湯と湯野川渓流沿いの
露天風呂があり、無色透明無味無臭の単純温泉が掛け流しにされている。さらりとしたあっさり系の
湯が気持ちいい。露天風呂は内湯より温度熱め、川と緑を見ながらのんびりと湯を楽しんだ。

濃々園露天風呂
そろそろ日も傾いてきた。今日の宿へと急ぐことにする。湯野川温泉から南下し、陸奥湾沿いの道を
東へ進んでむつ市内へ。そこから今度は恐山方面へ山道を登っていくと、恐山の霊場まであと1分、
というところに今夜の宿・湯坂温泉「石楠花荘」があった。
車を降りた瞬間匂ってきた硫黄臭にまずびっくり。見渡せば、宿の裏手は硫黄が噴き出す地獄地帯に
なっており、立入禁止の看板が立ち並ぶ。さすがは恐山の山中、ちょっと異様な雰囲気のところだ。

宿の周囲は地獄地帯 硫黄が湧き出す湖・宇曽利山湖
石楠花荘は、恐山の観光客相手の食堂・売店だが民宿も経営しており、老夫婦が2人で切り盛りしている。
部屋に通されるまでの廊下にはわけのわからない石や置物がびっしり並べられ、壁には錦絵みたいなものが
貼られている。案内された部屋は4畳半に既にフトンが敷いてあるだけ。かなりストイックな空間だ。
そして室内に貼られたおびただしい貼り紙。おばあちゃんの説明によると、男湯は改装中で入浴不可。
泊り客は俺だけなので、24時間自由に女湯を使ってくださいとのこと。
風呂の前にまず便所へ行ってみると、ションベンしてたら誰もいないはずの大便器のほうからジョロジョロと
水音がしとる!そそくさと用をすませ風呂へ向かうと、風呂の入口にはめちゃくちゃいっぱいキノコが
描かれたなんだかケバケバしい絵が!どこもかしこも寺山修司の世界と棟方志向の世界が交じり合った
感じでなんかおどろおどろしい雰囲気。はっきりいってちょっとブキミでコワイ!かなりきとる!

石楠花荘外観 廊下

部屋の貼り紙 不気味な絵
風呂に入ろうと脱衣場に行くと、等身大のミノとワラジが掛けられとる!鬼太郎が出てきそう!
浴室は白一色。カランが2つほどしかないのにやたら洗い場が広くて薄暗い。浴槽には青白い濁り湯が
掛け流し。硫黄臭が強く、めちゃめちゃ苦まずい硫黄味の湯で、熱くもぬるくもない温度、40.5℃くらい
だろうか。ちょっとおとなしめの硫黄泉だな、くらいの感じでつかっていると、だんだん肌がピリピリ
してきた。酸性度もけっこうあるみたいだ。じーっくりと湯にひたっていると、じわじわと体の中に
染み込んでくる感じ。この湯は本物だ。

脱衣場。なんかコワイ! 浴室
風呂からあがり夕食。畳の食堂に行くと囲炉裏に火が入っていた。9月とはいえ、恐山は朝夕かなり
冷え込むのだ。食事は全然期待していなかったが、これがびっくりするほどよかった。海産物も
山菜・キノコもうまくて大満足。食べながら、老夫婦がいろんな下北情報を教えてくれて、かなり
いい人たちだった。よそ者にもわかるように方言も抑え目にしてくれたし。温泉談義になるとおっちゃんが、
うちの湯は湧いたままの源泉そのままを掛け流しており、ちょっとぬるいが加熱はしていない。これが本来
あるべき温泉の姿だと言っていたのが印象的だ。すっかり老夫婦と打ち解けたおかげで、先ほどの
宿のブキミさも、さほど気にならなくなった。食後、またぬるめの湯にじっくりつかった後は、
あっという間に眠りについていた。
朝、目覚めると5時だった。朝風呂に入った後、散歩を兼ねて恐山にお参りに行くことにした。

夕食 囲炉裏
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