男の旅は一人旅 番外・新婚旅行編 3
市街地を横切る巨大なグリーンベルト・大通公園、そしてそこに高く聳え立つテレビ塔のある
札幌市街は、久屋大通公園にテレビ塔が立つ名古屋の中心部・栄の風景に良く似ている。
大通公園のすぐ近くには、札幌観光の定番・札幌時計台がある。札幌時計台は、期待して
行ってみたらあまりのしょぼさにがっかりするという「日本三大がっかり名所」のひとつ
なんだそうだが、僕はぜんぜんがっかりしなかった。こじんまりした好ましいスケールの
白い下見板張りの建物の中央に立ちがる時計塔。中に入ると1階はパネル展示、2階は
旧講堂に時計の機械等が展示されていた。なんでこれががっかり名所なんだろ。ちなみに
日本三大がっかり名所は、札幌時計台と高知・はりまや橋までは知ってたけど残りのひとつは
知らなかったので調べてみると、三つ目は日光・眠り猫、長崎・オランダ坂、京都・京都タワーなど
色々あるらしい。じゃあ無理やり三大にしなくても札幌と高知で二大がっかり名所でいいやん。
でも僕は時計台はぜんぜんがっかりすることないなかなか味わい深い洋風近代建築だと思うけど。

さっぽろテレビ塔 札幌時計台
赤レンガの外観が印象的な旧北海道庁あたりをまわったところで、腹が減ってきた。最初は
寿司でも食おうかと思っていたけど、あまりの寒さにあったまるものが食べたくなって思わず
入ってしまったのがラーメン屋「味の時計台」。ホタテバターコーンラーメンのミソ味を注文。
バターが溶けてまろやかになった濃厚な味噌スープと、少し焼き目のついたホタテがうまい。
嫁さんが食べてた醤油バージョンは、味が濃い独特の醤油スープでした。

旧北海道庁舎 ホタテバターコーンラーメン
札幌駅に新しくできたJRタワーの38階展望フロアへ行ってみた。上から見る札幌の街は碁盤目状の
道路に区画され整然としている。全方位をぐるりと見て回ると、雪が降ってすこし曇ってはいた
ものの、北海道大学、赤レンガ庁舎、テレビ塔、札幌ドームなどがよく見えた。この展望フロアの
隠れた名所が実はトイレ。全国の名物トイレを手がける設計事務所ゴンドラの小林純子氏がデザイン
したというトイレは、入ってみると外に向かってガラス張り、開放感のある放尿が楽しめる。
ちなみに外に向かって開放的といってもここは38階なので誰かに覗かれるということは多分ないし、
女子トイレは外に面しない建物内部側にあるので女性の方はご安心を。

整然とした札幌の街 JRタワー男子トイレ
札幌駅発の「快速エアポート」に乗っておよそ25分、小樽築港駅で下車し、宿の送迎バスに
乗り込む。15分ほど走ると今夜の宿、朝里川温泉「小樽旅亭蔵群」に到着。朝里川温泉は鄙びた
秘湯でもにぎやかな歓楽街でもないのだが、そんな寂しい温泉地で一人勝ち状態なのがこの「蔵群」。
北海道でデザイナーズ高級温泉旅館は成功しない、という定説をくつがえしたハイセンスな建築は
中山真琴の設計。雑誌のアンケートでは常に行ってみたい宿の上位にランクされ、今や日本全国から
客を呼べる宿である。送迎バスを下りると、宿の目の前はラブホテルというロケーションにちょっと
びっくり。まあとにかく中に入る。あえて狭く暗くしたアプローチを抜け、まずはカフェで抹茶の
サービス。ここで宿帳を記帳した後、今日の部屋「多喜二」へ案内された。19ある部屋はすべて
異なるコンセプトで19通りのデザインがなされているらしい。部屋には小樽ゆかりの文学者の名が
付けられており、僕らの部屋「多喜二」は代表作「蟹工船」で知られるプロレタリア文学者・
小林多喜二にちなむもの。部屋は木をふんだんに使ったメゾネットタイプで、高さの低い障子を
開けると窓の外には雪景色。2階にあがると寝室と朝里川温泉の源泉が引かれた浴室。たしかに
女性からの支持が高いのがうなずけるきれいなデザイン。嫁さんなんか、こんな家に住みたいとまで
言い出した。でも女の人って、こういうシンプルで和風モダンな空間に憧れるわーといいながら、
自分の家には信じられないくらい趣味の悪い壁紙貼ったりするのなんでだろ。

外観 エントランス

客室「多喜二」
部屋から出てもパブリックスペースが充実。のんびりとくつろげるロビーにカフェ、好きな本を
読んだりレコードを聴いたりできるライブラリ、そして色とりどりの酒瓶も美しいバー。この宿は
オールインクルーシブシステムとなっており、館内のバーやカフェで飲んだり、食事時に注文したり
するアルコールやソフトドリンク、そして部屋の冷蔵庫の飲み物もすべて宿泊料金に含まれている。
宿代に加えて飲み物代の追加料金を取られない、というのはなんだかうれしい。だって感覚的には
飲み物タダで飲み放題なんだから。というわけでバーカウンターでトマトジュースを一杯!

ライブラリ バー
男女別の湯屋は内湯と露天があり、湯は無色透明、部屋の風呂と違って残念ながら循環。でも、
雪景色を眺めながらのんびりとつかると北海道の温泉につかっているという実感が沸いてくる。
気持ちいい!風呂から上がった後にくつろげるロビーには、16種類の香水が用意されており、
自由に使うことができる。まあ僕は香水なんていうガラじゃないのでやめときましたけど。

浴室 露天風呂
食事は個室の食事処でいただく。純粋な日本料理ではなく、多国籍な感じの創作懐石。北海道の
極上素材が丁寧に仕事された料理は全品どれもうまい。なかでもクリーミィなカキグラタンや、
大トロじゃないの?!といいたくなるような中トロや、黒ソイの刺身も絶品。20センチはある鱈場蟹の
足を陶板焼きして半生状態でパクリ!北海道ならではの魚、八角は積丹産のものをソテーにして
キャビアを添えてあり、ほろりとする身が良い。羅臼産の吉次(キンキ)は皮についた脂が最高!
翌朝の朝食もきれいな食器にレイアウトされており、ホタテ刺身、サバみりんがうまい。そしてなにより
土鍋で炊いた御飯。銘柄はもちろん「きらら397」。香りだけでもおいしい御飯でした。

カキグラタン 刺身

タラバガニ陶板焼 八角ソテー

吉次一夜干 朝食
チェックアウトのぎりぎりまで、洗練された空間の中でのんびりと過ごすことができた。館内の
写真を見ればわかるんだけどこの建物、通常の窓の高さよりも低い足元部分がガラス窓になっている
部分が多い。図書室もそうだし、浴室もカフェもそう。足元をガラスにすることによって壁が床から
浮いているように見える効果が得られていて、それを強調するように間接照明が仕込まれている。
内部空間だけでなく、中庭ごしの建物の外観も足元のガラスによって黒いハコが浮いているように
見える。仕上げに使われている材料は土壁、コンクリートブロックなど、どちらかというと重厚な
素材なのに、この日本旅館らしからぬ「浮遊感」が生む空間の「軽さ」が、訪れる人にモダンな
印象を与えているような気がしました。

足下に窓のあるカフェ 足下のガラスで建物が浮いて見える。
宿をチェックアウトし、送迎バスで小樽駅まで送ってもらう。駅からまっすぐ延びるメインストリートを
歩くと昭和5年にできたという北海経済新聞社のビルが見えてきた。昭和初期までニシン漁の基地として
栄え、「北のウォール街」と呼ばれた往事をしのばせる立派な建物をあちこちに見ることができる。
腹が減ってきたので「うろこ番屋」という店で昼食。僕はカニ、ウニ、イクラが乗る丼にカニ汁が
ついた「おたもい丼」を注文。おたもいってなんだ?と思ったら、どうやら地名らしく、オタモイ海岸と
いうのがあるらしい。サッポロビール飲みながらむしゃむしゃ食べる。今はウニの旬じゃないとわかって
いてもやっぱりうまい!嫁さんの頼んだ「寅之助」という品種の鮭の焼き魚も脂が乗ってうまかった。

北海経済新聞社 おたもい丼
食事の後、とりあえず小樽運河を散歩。かつてはニシン景気に沸いた小樽だが、今はガラス工芸の街。
というわけでガラスの店「北一硝子」へ行ってみた。そこで見つけたアクセサリーボックスを嫁さんが
えらく気に入ったご様子。嫁さんがモノに一目ぼれして絶対これ欲しいなんていうのはすごく珍しい
ことなので、今回の旅行の記念に買うことに。
小樽商工会議所や旧三井銀行小樽支店など、歴史的建造物が建ち並ぶ通りを歩いて再び小樽駅へ戻る。
この駅もなかなかクラシックな建物だ。ここから「快速エアポート」に乗って一気に終点の新千歳空港へ。
いよいよ旅も終わりだ。

小樽運河

小樽商工会議所 旧三井銀行小樽支店

小樽駅
最後に空港内にある「北海道ラーメン道場」へ行ってみた。札幌、函館、旭川、十勝のラーメンの名店が
出店しており、今回は旭川ラーメン「特一番」の醤油ラーメンを賞味。あっさりめのスープと固めの麺、
細切のネギがうまかった。

北海道ラーメン道場 旭川「特一番」の醤油ラーメン
今回の旅で一番良かったのは何?と嫁さんに聞いてみると、熟考の末、トワイライトエクスプレスだと
答えた。よっぽど列車の旅がお気に召したらしい。トワイライトエクスプレス、また乗ってみようかな、
銀婚式あたりに。おわり
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