男の旅は一人旅 宮城山形編 2
鳴子御殿湯駅から一駅、今日の最終目的地・鳴子温泉駅に到着。
ますます勢いを増した雪に負けじとさっそく共同浴場・滝の湯に向かう。
大きな切妻に湯気抜きがついた屋根が特徴的で、鳴子でもっとも古き良き
温泉情緒を楽しめる湯だ。近所の自販機で150円の入浴券を買い、番台のおっさんに渡して
脱衣場へ。やはりここは鳴子の一番人気でたくさんの人がいた。浴室、浴槽はすべて木造。
手前の浴槽に大きな丸太でできた樋から湯が滝のように豪快に掛け流しになっている。
滝の湯の名はここから来ているのだろう。
酸性−含硫黄-ナトリウム−アルミニウム-カルシウム−含鉄−硫酸塩泉(長い!)の湯は
ほんのり青白く濁った半透明で、硫黄臭。PHは2.8で、なめるとレモン味が感じられ、
温度は熱めだ。奥の小さな浴槽には打たせ湯が2本落ちており、温度はぬるめ。
ぬる湯好きの俺は奥のほうが気に入った。この上質湯、この雰囲気が
150円で味わえるとはすばらしい。
つづいて向ったのは旅館・東多賀の湯。500円の日帰り入浴をお願いした。
浴室の入口に「硫化水素ガスがたまりたいへん危険です。必ず窓を開けてください」と
貼紙がある。これは期待できそうだ。硫化水素ガスで中毒死。そんな死に方も
ありかなと思った。宿の外観はわりと新し目だが、小さな浴室は木でできており、
浴槽の縁は湯の成分でペンキを塗ったように真っ白になっている。
風情は滝の湯に負けてない。パイプから掛け流される湯はしっかりした白濁湯、
硫黄臭、味は苦くてまずい。泉質は含硫黄-ナトリウム-カルシウム−硫酸塩泉で弱酸性。
温度はぬるめで肌触りはつつみこまれるようにやわらかい。眠りたくなるような
すばらしい湯。俺は鳴子でここの湯が一番気に入った。
そろそろ今日の宿・ホテル瀧嶋にチェックインすることにした。ホテルとはいいながら
民営の国民宿舎で、かなり汚れの目立つALC吹き付けの外壁。そのくたびれ方は、
るるぶ片手の女子大生なんかが来たら当日キャンセルしてしまいそうな勢いだ。
この手の宿では珍しいことだが、フロントではここの娘だという高校生くらいの姉妹が
出迎えてくれた。通された部屋は303号室という6畳の和室。少しのんびりしてから、
もう一湯日帰り入浴を楽しむことにして外出。雪道を徘徊し、今度は東多賀の湯の隣にある
西多賀旅館に決めた。400円を払い、浴室に赴くと、白いタイルの浴室に
角がアールの浴槽、そこにエメラルドグリーンの湯がはられている。
東鳴子ほどではないがほんのりアブラ臭がただよっている。湯は芒硝-重曹系、
なめらかで冷えた体に心地よい。ほんの十数メートルしか離れていない東多賀の湯と
こんなに泉質がちがうのには驚きだ。さすが鳴子温泉、侮れない。
よく温まったところで宿へと帰った。
夕食までもう少し時間があるので、宿の風呂に入ることにした。貸切制の薬湯は
順番待ち状態だったので、まず男湯に入る。火山岩を組み上げたような壁から
湯が流れ落ちており、成分が析出してこびりついている。
ナトリウム−カルシウム-炭酸水素塩泉の透明な湯はかなり熱く感じた。
湯はなんとも形容しがたい臭いがしている。芒硝系特有の薬臭かなーと思ったが
この湯の泉質は含土類の重曹系。うーん、ほんとに例えようがない。
男湯からあがっても薬湯は依然順番待ち。深夜にでも入るとするか。
そんなこんなで飯の時間になった。でもここの飯ははずれやったなー。
お膳には冷たくなったおかずが並んでた。評価できるのは小さな鍋くらいかな。
10段階評価なら2くらい。部屋に帰って自分で布団を敷いてふて寝した。
夜中の1時に目が覚めた。薬湯に行ってみると当然誰もいない。入浴中の札を裏返して
さっそく入ってみる。泉質はナトリウム-塩化物−硫酸塩-炭酸水素塩泉。
重曹系に加え芒硝系であり、塩素イオンも入っているところが男湯とちょっとちがう。
浴室のつくりはほどんど男湯と同じだが、壁の向こうに源泉の湯溜めがあり、
そこから源泉蛇口がついている。この源泉は鳴子でも貴重な自噴泉らしい。
入ってみると湯の感じは男湯とほとんど同じ。なーんだと思ってあがると、
とてもあたたまっていて驚いた。温まり方がさっきのとはちょっと違う。
「あたたまりの湯」といわれる塩化物系が入っているからかもしれない。
これが薬湯の効果か。侮れない。侮れないけどわかりにくい。
翌朝、朝飯もいまひとつ。まあ一泊二日6650円だからしゃーないか。
失意のうちに宿をあとにし、もう一つの共同湯・早稲田桟敷湯に向かった。
昭和23年、早稲田大学の学生がボーリング実習中に温泉を掘り当てた。早稲田湯として
地域に開放されていたこの湯は、50周年を期に早大・石山修武研究室の設計で
早稲田桟敷湯としてリニューアルされた。街中に点在する「石山修武フォント」の
サインに誘導されてたどりつくと、硫黄色をイメージしたというあの黄色い建物が現れた。
建物の中央に裂け目のように作られた通路でアプローチ。でも屋根まで裂け目つくらんでも
いいやん。雪めちゃ降りこんできてるやん。このアプローチ、知らない人だったら
どっから入るかわかりにくくて躊躇するかも。でかい木製引戸を引き開けて
階段でロビーに下り、500円払って浴室へ。浴室内は平面的に90度の直角が
使われているところはほとんどなく、デコンチックな石山ワールドが展開している。
天井は吹きぬけており、上部で女湯とつながっている。コンクリート製の浴槽は
3つに分かれており、その境には2本の木製樋が設けられ、源泉が湯船に引き込まれている。
その樋にはカニの身をほぐしたような白い湯の花がたまっている。
樋からちょろちょろと流れるナトリウム-硫酸塩-塩化物泉の湯は無色透明、
ほんのり薬臭がしてちょっと苦い。湯はかなり熱く、源泉には触れない。
一番深い浴槽につかっているとすぐのぼせてきた。それにしてもこんなに天井が高いのに
すごい湯気だ。よく見ると足元に換気扇がついていた。石山センセーよ、
換気扇は上のほうにとらないと湯気が抜けないやん。だめだなー。
でも洗い場の鏡がめちゃタテ長なのがかっこよかったので許してあげよう。
でも壁の塗装がぷっくりめくれてきてるのはいただけんなーやっぱり。
鳴子を去る前にもう一風呂浴びていくことにした。農民の家は、大規模な宿泊施設。
旅籠部もあるが、どうやら湯治部がメインらしく、ロビーは大きな荷物をかかえた
老人たちであふれていた。500円を払い、まず硫黄泉という浴室へ言ってみたら
残念ながら清掃中。気を取り直しアルカリ泉大浴場に入ってみた。
含硫黄-ナトリウム−カルシウム−硫酸塩-炭酸水素塩泉の湯は黄緑色で、
大きな湯船に豪快に掛け流されている。硫黄のいい臭いがしており、味はというと
芒硝、重曹に加え石膏系でもあるのでちょっと苦い。ほぼ中性の湯だが
重曹系が入っているのでアルカリ泉と銘打っているようだ。どうやら混浴のようで、
おばちゃんたちも入っている。たっぷりの湯がとても気持ちいい大浴場なのだった。
続いて炭酸泉というちいさな浴室へ。木の浴槽に満たされているのは33℃の冷たい源泉で
無色透明。黒っぽい湯の花がゆらめいている。パンフレットには日本で3箇所しかない
単純炭酸泉とあるが、鳴子に単純炭酸泉は湧いていないはずだ。分析表を見ると
単純温泉とあり、炭酸泉の特徴である気泡もほとんど体につかない。
よくわからないが、でもまあ冷たくて気持ちのいい湯だ。実は俺は熱湯が苦手なので、
こんな水みたいに冷たい温泉が好きである。ここには小さな上がり湯に
先ほどのアルカリ泉が引かれているので、体が冷えたらそこで温めればいい。
ここも混浴。ふたつの浴槽を往復しているとおばあちゃんが入ってきて、
いろいろ話しかけてきた。が、ズーズー弁の話は6割くらいしか理解できず、
わけもわからんまま相槌を打ち続けたのだった。さて、ここにはまだ気泡の湯、
やすらぎの湯という浴室があるようだが、このへんでタイムアップ。
もう駅に列車が着くころだ。
急いで着替えてものすごい雪の中を走って駅に着くと、もう電車がホームに入っており、
危うく乗り遅れるところだった。新庄行の各駅停車の車中で鳴子温泉郷を回想した。
はっきりいってどの湯もよかった。しかもどの湯も個性があってはしごしていて
楽しくなる温泉郷だった。中山平温泉駅を通過する。ここにも入りたかったんだけどなー。
陸羽東線沿泉にはまだまだ赤倉温泉、瀬見温泉といった最上温泉郷があるのだが、
列車本数が少ないので今回は途中下車するわけにはいかず、泣く泣く見送った。
このへんがローカル線温泉行脚のつらいところだ。
新庄に着くと奥羽本線に乗り換え。大石田駅でバスに乗り換えて銀山温泉に向かう予定、
が、雪の影響で列車が延着。バスに間に合わなくなった。うーんどうしよう。
奥羽本線沿泉にも碁点温泉、東根温泉、天童温泉といった温泉が点在していて魅力的だ。
でもこの雪だ。電車もバスもいつ運休になるかわからない。
すこしでも早く目的地に着いておくのが得策だろう。各駅停車で山形駅まで出ると、
ダッシュでバスに乗り換えて今日の目的地・蔵王温泉に向かった。
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