男の旅は一人旅 宮城山形編 3

蔵王バスターミナルに着くと雪はさらに勢いを増していた。なんだか鳴子の雪とちがって
さらさらしている。いわゆるパウダースノーというやつなんだろう。とりあえず
まっすぐ今日の宿にチェックインした。旅館姫の湯・堀久は下湯共同浴場の
すぐとなりに建っていた。フロントで宿帳に記帳。「スキーはしないんですか」「しません。」
「こんなところに一人で泊まりに来るのにスキーしない人なんて珍しいですね。」
蔵王って温泉リゾートというよりやっぱりスキーリゾートってことなんだろう。
「僕は温泉専門ですから。」「じゃー町に3つある共同浴場に行くといいですよ。
ただですから。」「え?!ただなの。」「旅館の宿泊客は無料で入れます。」行くしかないやろ。

本日の部屋・萩の間に荷物を置いてさっそく湯めぐりに出かけた。かつて蔵王温泉は
高湯と呼ばれており、温泉街のメインストリートも高湯通りという。
両側に旅館や土産物屋が立ち並ぶ高湯通りの側溝には温泉が音を立てて流れており、
もうもうと湯煙をあげている。すさまじい湯量だ。まず老舗旅館・高見屋で立ち寄り入浴。
こぎれいなつくりで女性に喜ばれそうな旅館だ。500円払い、長寿の湯に入った。
源泉掛け流しにするため小さな湯船しか作れませんと、うれしい貼り紙がしてある。
小さめのヒノキの浴槽が一つ。硫黄臭のする湯はPH1.3の強酸性なので
レモンのように酸っぱい。蔵王にはめずらしくしっかりと白濁した湯で、
熱すぎず満足できた。ここにはせせらぎの湯という樽風呂の露天風呂もあるが、
この吹雪の中露天に入る気になれなかった。ここは長寿の湯だけでも
十分500円の価値があると思った。

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高湯通り           高見屋

3つある共同浴場の中でも最も小さい川原湯に行ってみた。木造切妻屋根の湯小屋は
奥まったところにあるうえ小さすぎるので注意していないと見過ごしてしまう。
中には7,8人入れる木の浴槽が一つ。底がすのこになっているが、
底から湯が湧いているわけではなくパイプの湯口から湯が注がれていた。
ガラスの小口を思わせる緑色透明の酸性−含鉄・硫黄−アルミニウム-硫酸塩−塩化物泉。
見た目も泉質も草津温泉に似ている。かなり熱めの湯でぴりぴりする。そろりと入って
じっとしてないとじーんと熱い。硫酸アルミニウム、つまり明礬を含んでいるので
硫黄臭に混じって明礬臭がし、レモンのような強い酸味に加え渋みが感じられる。
PH1.45の強酸性なので目に入ると強烈に染みる。浴室の雰囲気も良く、
熱くてさっぱり爽快な湯だった。
つづいて上湯共同浴場に入湯。ここも小さな切妻の木造の浴舎で、
坂の上のわかりやすい位置にある。わりと大き目の浴槽で、川原湯と同じような
湯があふれていたが、こっちのほうが酸味もマイルドで硫黄臭も弱くぬるめだったで、
ちと物足りない感じだ。のんびりとつかって宿へと帰還した。

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川原湯            上湯

部屋に帰って宿の風呂に入ろうとしていると、夕食がもうできたと言う。
一風呂浴びたかったが温かいうちに食べたいので食事室へ言ってみると、なかなか豪勢だ。
山形牛のすき焼きがメインで、芋煮、天ぷらなどなど。ここの飯は大当たりで、
全品おいしく食べられた。これで一泊二食8000円ならお得だなー。
ビールとすき焼きで大満足で部屋に帰り、デジカメをいじっていると、なんと
全画像を消去してしまった。思いの他泥酔していたのだろうか。思わずふて寝した。
夜中目が覚めると宿の風呂に入った。タイルの浴室で、浴槽だけが木でできている。
湯はぬるい。酸味もきつくない。おそらく加水しているのだろう。ちょっと物足りないが、
のんびりと長湯できるのでまあよかろう。部屋に戻って外を見ると、
雪はまったく止む気配もなく降り続いており、漠然とした不安に襲われた。
「帰れなくなっちゃうかもしんない。」

翌朝、ガリガリとものすごい音で目が覚めた。宿のおっさんが
つららを取り除いている音だった。つららの長さは1m、直径4cmはあるから
なかなかの重労働だ。6時半、朝一番で宿のすぐ隣の下湯共同浴場に直行。
ぞうりと浴衣を脱ぎ捨て、木造の浴室に突入するともうもうと湯煙が立ち込めており、
床板はペンキを塗ったように白くなっている。緑がかった透明な湯はピリッと熱い。
硫黄臭、レモン味・苦味もしっかりある。気持ちのいい目覚めの湯となった。
宿へ帰ると朝飯。ちょっと少ないかな、というこれくらいのおかずの量が
朝はちょうどいい。朝飯を食べ終わるとすぐに出かけた。
どうしても見たいものがあったのだ。樹氷である。

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下湯外観           下湯源泉

宿から歩いて蔵王ロープウエイ山麓駅に到着。ゴンドラに乗り込むと俺以外は
全員スキーヤーだった。まずは樹氷高原駅に向かうが、その途中ではシベリアからの
季節風が落葉したブナの枝に当たって氷結した霧氷をみることができる。
霧氷に覆われた山の美しさには言葉が出ない。樹氷高原駅でさらにゴンドラを乗り継いで
山頂駅へ。ゴンドラのガラス、内壁、天井、すべて凍っている。あまりの寒さに、
人の吐く息がゴンドラ内部にあたった瞬間氷結してしまうのだ。俺たちは
冷凍庫に乗っているに等しかった。窓の氷を削り落とすと、眼下には樹氷の森が見えてきた。
樹氷の見ごろは1月中旬から2月らしく、まだ今は8割くらいの雪の付き方らしいが、
テレビや写真でみる樹氷に十分近いものになっている。山頂駅に到着。おそろしい寒さだ。
改札の電光掲示板を見ると、「只今の気温 -14℃」。凍るわ!
おそらく皮膚表面1センチくらいは凍ってたかも知んない。まわりのやつらは
スキーウエアに身を包み、板を抱えてゲレンデへと歩いていった。こんなところで
ジーパンにスニーカーを履いてるバカは俺しかいない。とにかく樹氷を見よう、
駅舎を出た瞬間「うぎゃー!」。吹雪というよりブリザードというほうがイメージが
正確に伝わりそうな雪と風に叩きつけられ俺は完全に戦意を喪失した。やっとのことで
樹氷の写真を4,5枚撮影すると駅に避難した。
ものすごく場違いなところにいるような気がして、はやく麓に降りたかった。
スキー客はすべって山を降りるから、帰りのゴンドラに乗っているのは俺だけである。
山麓駅に着くとやっと殺人的な寒さから開放され、まともな気温に戻ってきたかのように
思えた。が、電光掲示板には「只今の気温 −2℃」。いかんいかん、
完全に身体感覚が麻痺している。何がまともな温度や、氷点下やないか!

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霧氷             樹氷

冷えた体を温めようと蔵王でもう一湯。川原湯の隣に建つかわらゆ旅館で立ち寄り入浴。
浴室は木でできており、浴槽の底はすのこになっている。川原湯と似たつくりだが
湯口がない。つまりこのすのこの下から源泉が湧いているようだ。
硫黄臭も酸味も弱い気がしたが、他の湯と比べて湯がものすごくやわらかく感じる。
包み込まれるような浴感だ。この湯で300円は安い。

体が温まったところで蔵王を後にし、バスで山形駅へ。N建設計の
霞城セントラルという建物へ行ってみた。駅裏として開発が遅れていた西側に建てた
再開発ビルといったところだろう。店舗、オフィス、ホテルなどが入っているようだ。
ベージュ色のPCによるニューヨークのアールデコ・スカイスクレイパーと
ギリシャ系の円柱モチーフを合わせたようなクラシカルなデザインは
ぜんぜん俺の好みではなかった。とりあえずここで昼飯を食うことにした。
山形といえばそば処である。霞城セントラル1階の山形田というそば屋に入った。
そばの味なんてぜんぜんわからない俺だが、なかなかうまかった。
ちょっと汁がからかったけど、ま、それも北国らしくていいか。
もう旅も終わりに近づいた。この旅最後の温泉に入ろう、
そう思って山形から各駅停車で米沢に向かった。

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霞城セントラル

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