子どもの感性を育む会
《 緊急!子どもが学校につぶされる 》

提言1
 入試の廃止を 



入試制度こそが、学校の活力を左右し、授業のあり方を決定しています。 先ず、知識量をはかる今までの受験制度を分析します。所詮、教科書に書いてある知識を全部記憶することは不可能です。近年、新しい知識は日夜膨大な量が生まれています。また、図書館に行けば誰でもいつでも無料で知識を得ることができます。百科事典10冊分がたった一枚のCDに入っています。インターネットにより、世界中の知識が瞬時に入手できます。
勿論、知識は学問をするうえでの必要な道具でありますが、中学・高校においては、知識記憶が最大の教育目的になってしまっています。受験生は「数学は暗記科目である」などと言い、中学・高校教師は「君たちは最も記憶力のある年代だからガンバレ」と言います。

試験も、安易な問題から解いて点数を稼ぐということですが、公式と違うやり方で解いてみようとか、難しい問題から挑戦してみようというのが、本来の、学問をするということではないでしょうか。
有名企業の社長百人アンケートがあり、日本の教育システムで最も深刻なのは「進んで問題を見つけて解決する能力の不足」と56%の方が答えました。新卒者には、「積極性」「独創性」を望み、「学校で全員一律に同じことを考える仕組みは必要ない」と言います。

「不得意科目の克服」ほどつまらないものは有りません。克服したとして、実は「何でも知っているは何にも知らない」に通じています。東大客員教授の立花隆氏は著書で「東大生は、驚くほど無知、驚くほど幼稚であることが分かった」と書いています。
逆に、「一芸に抜きんでるものは全てに通じる」のであり、好きな科目をとことんやっていくことで、他の科目に立体的につながってくるのです。長所を伸ばすということを優先すべきです。

そもそも「学力」と一口に言ってもいろいろあります。洞察力・分析力・創造力・説得力・調整力・表現力、そして記憶力です。中学・高校での「実力テスト」とは、何をもって実力と称しているのでしょうか。

高校入試は大学入試の予行演習に位置づけられています。知識量偏差値のみで若者たちを序列化し、そのために競争させられています。
平成14年3月、衆議院予算委員会第四分科会で、大村議員(自民・愛知13区)が「高校受験制度により、指導困難校を生んでいる。学力だけで輪切りにしている。文科省は見直しを強く指導すべきだ」と要請しています。
平成13年秋、ある県議会にて県教育委員(前教育長)はこう答弁しています。「東大・京大への進学者数が多いのは教育レベルが高い」と。このような単純な価値観が教育界を覆い、現場の先生も、生徒も、親も、その被害者になっているという図式です。
怪獣の名前を沢山知っている児童がいました。小学校校長が「怪獣の名前より、草花の名前を覚えたほうがいい」などと言います。校長の一言で将来の考古学者を一人失ったかも知れませんし、「怪獣」に関連した仕事に就いて家族を養っている人もいるのです。偏に受験を前提とした教育が小学校まで影響しています。
ある国立大学主催の数学オリンピックで優秀な結果を出した高校生がいました。他の科目の成績も良かったので、担任が「東大医学部という最難関の学部に挑戦してはどうか」と勧めました。見事クリアしたところで、本人が果たして望んだ学部なのでしょうか、医師という職業に意欲を持てるのでしょうか、はなはだ心配に思わざるを得ません。

以前、「15の春を泣かせるな」という言葉がありましたが、今は「14のあきらめ」になっています。中二にして将来が決定づけられてしまっているのです。早々と、勉強ぎらいが大量生産されています。
めでたく東大に合格しても「何をしたらいいか分からない」という相談が、学内の保健センターに年間600人も来るそうです。ある国立大学教授は「不本意就学者、目標や職業が決定できない学生たち」の問題を指摘します。

遠い過去には、知識が必要な時代もありました。明治維新のころ、西洋文明の有識者は社会での活躍が約束されました。また、半世紀前の敗戦後は工業による復興を目指して、理数系の知識をたたき込まざるを得ない時代もありました。
しかし、近年は政治も経済も激動の時代です。大企業倒産・地価下落など、少し前までは考えられない事態にあります。中東・朝鮮半島などでの大規模な戦争の勃発が噂されています。原油暴騰により、デフレから一挙に激しいインフレへの可能性もあります。天変地異・異常気象も、ここ十年ほどは世界中で激増しています。今後は何が起こるか分からないというこの難局の時代に、教科書にすでに書いてある分かりきった知識を詰込み、簡単な問題から解いて点を稼ぐなどという教育でいいのでしょうか。

さてそこで、幸いにも入試改革が広がりつつあります。AO入試(Admission Office,入試事務室)という、学科試験も内申書も無しで、面接と小論文のみでの選出です。

99年6月に、中教審が「AO入試の格段の整備」を大学に要望しました。01年度には、全大学の三分の一にあたる207大学(04年度、国立22大学・公立7大学)が採り入れました。国内最初は、慶応大学総合政策と環境情報の二学部で、定員880人中200人がAO入試です。追跡調査をしますと、880人の成績上位300人中に、AO入試200人がほぼ全員入っているそうです。また、図書館の利用率も高いということです。
日本のAO入試は米国を手本にしています。ハーバード大学では、受験生一人に三人の面接官が当たりますが、後で評価を照合すると三人ともほとんど同じだそうです。面接評価の指標の一つに「この学生は周りの人間にどういう良い影響を与えるか」ですが、それで入ったのがかのジョン・F・ケネディ元大統領です。彼は日本の大学の受験だったら絶対に入れなかったと言われています。

予備校で小論文のための講座もありますが、そのようなメッキはすぐ剥がれます。入試を廃止して、本当のゆとり教育を実現することで、健全な人格を形成し、その中から沸き上がる学問への意欲を、面接・小論文で見ていただきたいということです。

ゆとり教育の実践について、欧米の実例を紹介します。小・中・高校の授業は午後1時で終わり、毎日が土曜日です。高校入試は以前からありません。イタリアの学校の夏休みは三ヶ月あります。フランスでは全国一律に小学生に宿題を出すことを禁止しています。ドイツの公立中学の正課に遊びがあり、家から持ってきた遊び道具で一時間自由に過ごします。また、校内にゲーム機センターがあり、放課後は自由に遊べます。フランスの週四日制の学校の生徒の母親は歓迎しています。「かえってよく勉強するようになった」と。
シンガポールでは97年から中学校教科内容を三割削減しました。目的は「考える力を養う」です。二年後の99年の国際数学・理科教育調査で同国はトップクラスを維持しています。それを受けて、有馬元文部大臣は「日本は変革を恐れすぎている」と本に書きました。

日本の近年の教育改革、新しい学力観に基づき、カリキュラム三割削減、週五日制、総合学習の採用などに大賛成ですが、入試が有るかぎりほとんど意味がありません。戦前の大学はほとんどの学部が無試験だったと聞いております。また、学校教育法施行規則を改正して、「都道府県の裁量で、高校入試と内申書を廃止できる」としました。一日も早く、入試の廃止を実現していただきたい。

ゆとり教育の原点は、子どもの権利条約の特筆すべき条項に「18才未満のすべての青少年は、遊ぶ権利、休息する権利、余暇を持つ権利がある」と謳っていますが、これこそ、青少年の健全な人格形成にはなくてはならない条件です。批准している欧米諸国は極めて忠実に遵守していますが、日本政府もこれらの権利を保障する義務が有るはずです。

社会人として最低限必要な基礎基本の習熟はもちろんのことですが、たっぷりとした自由時間を子どもたちに与えなければなりません。好きな本をいっぱい読み、友と語り、旅行をし、ボランティアをし、アルバイトをし、文化活動をすることによってこそ、個性を伸ばし、人格を形成するのです。その中から、学校の勉強への本物の意欲・関心が沸いてくるのです。が、学問への関心を皆が持つ必要はありません。学校の勉強が出来るということも、十人十色の個性の一つにすぎませんし、全員が大学卒業では社会は成り立たないのですから。
中教審の答申で、新しい時代の教養として「自らの立脚点を確認し、目標を見定め、主体的に行動する」とは、これらのことを指しているのではないでしょうか。

国連子どもの権利委員会にて、日本政府に対する審査がありました。冒頭「なぜ日本には高校入試があるのか」と聞かれて、日本政府は何も応えられなかったとのこと。
米国では、中三の年度末の夏休み中に役所から書類が送られてきて、高校に進学するかどうか、親がサインするだけで進学手続は終了です。

日本は、高校入試廃止の一環として、文科省は、中高一貫教育校を全国に500校を目標としています。希望者全入でなぜいけないのでしょうか。少子化で教室が余っている。小学校からは無条件で全員が中学に進みます。中学から希望者全員が最寄りの高校に進学しても何ら可笑しく有りません。もし定員を越えれば残念ながら抽選で第二志望校に行っていただくということです。
当然、学力格差を生じます。習熟度カリキュラムや、初級コースから大学並の高度な講座を幅広く揃えて選択させます。それでこそ、憲法「その能力に応じて教育を受ける権利がある」を初めて実現できるのです。

勉強は、「入試に出るから」は本末転倒です。SCHOOLの語源は「余暇」であり、「面白いから」やるものではないでしょうか。
化学マジックを授業に取り入れている、ある米国の理科教師は「教師は世界一の職業である。生徒達の目を輝かせることができる」と語っています。
数学という抽象の美学、歴史という壮大な推理ノンフィクション、生物学という性の神秘、英語による異文化との交流、社会学という人間の混とんとした営み、などなど。
教師は、手ぐすね引いて待っています。生徒が勉強が好きになるかどうか、教師の本領が発揮出来るかどうかは、偏に、知識量入試の廃止に掛かっています。受験制度の廃止無くして、真の教育改革はあり得ません。

提言1「入試の廃止」以上



「子どもの感性を育む会」

学校教育の唯一の目的は、
子どもが「自分は何をやりたいか」を
見つける機会を与えることである。


代表:寺本こういち
school@gld.mmtr.or.jp



 行政と学校に対し、下記の項目を急ぎ要望いたします。

 ◇ 大学・高校への入試と内申書の廃止
 ◇ 小・中・高校のカリキュラムの半減
 ◇ 既存の校則の全廃
 ◇ 25人学級の実現
 ◇ 児童・生徒による授業評価システムの導入
 ◇ 遊ぶ権利・休息する権利・余暇を持つ権利の保障
 ◇ 児童・生徒の名前の呼び捨て禁止、「未熟な子ども」扱いの禁止
 ◇ 法の遵守、児童・生徒の人格尊重




各ページも続けて是非お読みください
提言1、「入試の廃止」
提言2、「校則の廃止」
提言3、「別の二つの評価を」
提言4、「呼び捨て・子ども扱いの禁止」
提言5、「小学校英語授業の撤廃」
報告1、遊び放題、やりたい放題 の促進
報告2、詩「子ども」
報告3、国連の厳しい膨大な勧告
報告4、教育改革への朗報
告発1、学校による生徒いじめの実態
告発2、「自由」を甘えと決め付ける学校
告発3、ウソで固めた制服
告発4、非行を後押しする教師
告発5、「遊ぶ権利」を奪う学校
告発6、教師の校内暴力
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