モンゴルで馬に乗る ☆・・・★・・・☆・・・★・・・☆
モンゴルを旅する目的は、人それぞれだと思いますが、夏に訪れるツーリストの多くは、「草原を馬で走りたい」という野望を抱いているはず。「モンゴルの馬に乗らずしてモンゴルを語るなかれ」という人もいるくらいです。
そこで、初めてモンゴル・乗馬トレッキングに出かける方々に向けて、センエツながらアドバイスを少々。
★ 馬
モンゴルの馬が、サラブレットやアングロアラブに比べてかなり小さいことは、一般的によく知られています。毛色は様々ですが、時々、四肢に横縞がでる場合があります。これは、タヒ(モンゴル古来の野生馬・プシュバルスキー馬)の血を受け継ぐ証といわれます。普段から群れで行動し、半野生の状態だという人もいますが、群れの中でゆったりと暮らしているためか、サラ系のような神経質さはみられません。従順で乗り心地の良い馬がほとんどです。
★ 頭絡・ハミ(ハザル・アムガイ) 
牛などの革をなめして作った手作りの無口頭絡のほか、銀や玉の装飾の付いた美しい頭絡もよく見かけます。
ハミは、西洋のものと同様の形をしたリングハミが多いようですが、西洋のものより細く、制御はよく効きます。
★ 鞍(エメル)
モンゴルでお目にかかる鞍は、大きく分けて二つあります。モンゴル式木製の鞍と、革製のロシア鞍・軍隊鞍といわれるものです。乗馬トレッキングツアーの場合、大概はロシア鞍が支給されることが多いようですが、時にはモンゴル鞍が登場する場合も。ロシア鞍は、形に多少の差こそあれ、騎座の姿勢はブリティッシュの感覚に近く、乗馬経験者なら慣れるのも早いでしょう。
でも、せっかくモン
ゴルに来たのなら、モンゴル特有の鞍に乗ってみたいと思うのが人情ってぇもんです。
ところがこのモンゴル式の鞍、なかなか手強いツワモノ。
木製ですから当然固い。しかも、座るとちょうど内腿に当たる所に大きな銀のボタン飾りがあります。これが痛い。我慢して乗っていると、腿に大きな桃のような痣ができちゃいますからご用心、ご用心。それでも、鞍部の前橋・後橋が高くなっているので、立ち乗り時の安定感は相当なものです。はじめから立ち乗りしてれば痣もできないんですけどね・・・。
対策として、座布団を敷く人もいるようですが、見た目の美しさを重視すると、タオルなどでプロテクターを作り、内腿やふくらはぎにあて、その上からズボンをはく方がカッコイイでしょう。
★ 服装
乗馬に一番いいのは、デールなんですが・・・。
夏にトレッキングをする場合でも、乾燥した気候のモンゴルでは長袖も暑くありません。むしろ、強い日差しや虫、ケガを防いでくれる点でお薦めです。 キラキラ光る素材のもの、音がするもの、動きにくいものは避けましょう。ズボンは、当然長ズボン。厚手で、だぶつかず、伸縮性のあるものを選んでください。ジャージ・チノパン・乗馬用キュロットが適当です。
よく、リュックサックなどを背負って乗る人がいますが、長時間ですと、肩が凝ります。できるだけ荷物は控え、大きくてもウェストポーチくらいにとどめておきましょう。
帽子は必携。ただし、風で飛ばされないように、紐やピンなどで固定しましょう。
靴は、ブーツが一番です。乗馬用でなくても、内側にファスナーがついていたり、靴底がブ厚かったり、かかとが高かったりしなければ大丈夫です。乗馬用のチョッパーがあれば、スニーカーでもOK。チャップスはお勧めしません。また、手の皮が厚くない人は、軍手があると便利。
★ 乗りかた
モンゴルの馬は、ふだんから群れで行動しているのせいか、鞍を付けた後も仲良くくっついています。これはなかなかカワイイ光景なんですが、お目当ての馬に近づく時は、その周囲の馬の様子にも気を配ってください。けっして馬の背後から近づかないように心がけましょう。当然ですが、蹴られると痛いです。
乗る時は、ブリティッシュやウエスタン同様、馬の左側から乗ります。ご存じの通り、モンゴルの馬は小ぶりですから、小柄な女の子でも簡単に乗れてしまうでしょう。
手綱はまとめて左手に持ちます。鐙は深く入れすぎないように。
動かしかたは、
1 手綱を少し緩める
2 体重を心持ち、前に移動する。
3 強く息を吹き出して「チョッ」と掛け声を掛ける。
4 馬の腹を軽く蹴る
などがあります。1から3の併用が最も効果的と思います。
手綱のほかに、引き手綱が一本ついていることがあります。これは、ムチ代わりにもなりますので、右手に持っていましょう。ピンと張りすぎたり、地面に垂れたりしないように気をつけてください。
★ 走らせかた
馬にもよりますが、「チョッ」と声をかけるだけで走る馬がほとんどです。速歩、駆歩とも、少しお尻を浮かせたほうが乗りやすく、馬も走りやすいはずです。モンゴル鞍なら、この立ち乗りが実に安定して乗りやすいのです。
日本の乗馬クラブで日々騎座の確保に精進されている方も、「郷に入れば郷に従え」。モンゴルの馬にはモンゴルの乗り方が一番似合います。この際、日本のオニ教官のことは忘れて、牧民ライディングを習得しましょう。
★ 操縦
基本的には、ハミとコンタクトが保たれた状態の手綱を左右に動かすだけです。走っている時は、曲がりたい方向に体重をかけてみましょう。
★ 止めかた
基本的には手綱を引くだけです。ぜったいに前かがみにならないこと。止まらない時は、鐙に踏ん張り全身でグィーッ、グィーッと、何度かに分けて引っ張ってみましょう。手綱を引きっぱなしでは、なかなか止まりません。
★ 穴・腹帯
青空の下、草の海原を馬で走るのは最高の気分・・・なんですが。

こんなことにならないようにご用心。え?彼女はなんで消えたかって?それはですね。
穴なんです。
草原は平らではありません。予期せぬところに溝があったり、ネズミの巣穴があいていたりします。しかもタチの悪いことに、それらは草で覆われていたり、地下でトンネル状になっていたりして、馬の上からでは見つけにくいときています。思わぬところで穴に遭遇して、馬もろともすっころぶことは、日頃から馬に乗りなれているモンゴル人でもあるようですが、同じ事をカルシウム不足が問題にされている日本人がしたらどうなるか・・・。モンゴルの草原の表土は固いですぞ。
ですから、草原の状態をよく観察して、あやしそうなところは避けて通るくらいの用心が必要です。
また、モンゴル式の腹帯は緩みやすいので気をつけてください。うっかりすると、鞍がズルッと回転して人間だけ落っこちることもあります。経験がないと、乗っている本人には腹帯が緩んでいるかどうかわかりにくいので、時々まわりの人、とくに付き添いの馬方さんに見てもらいましょう。
腹帯を締め直す時は、馬から下りて、二本ある腹帯の後ろの方を締めます。腹を触られるのを嫌がって蹴る馬もいるので、不慣れな人は馬方さんにお任せした方が無難です。
★ゲルの近くを通る時は・・・
馬で草原を移動中に、ゲルの近くを通りすぎるときは近づきすぎないように気をつけましょう。どのゲルでも、たいてい犬を飼っています。近づいてきた人影が不審なヤツだと判断した途端、走り出てきて、吠えかかります。噛まれたくなかったら、寄る予定のないゲルは遠めに見ておいた方が無難です。
訪問先のゲルの飼い犬が吠えかかってきた時は、まず、馬に乗ったまま立ち止まり、それ以上近づかないようにし、ゲルの中の人が出てきて犬を止めるのを待ちましょう。
人がなかなか出てこなかったら、「ノホイ ホリ!(犬を捕まえろ)」と叫んでください。
一見、狂暴にみえる犬達も、いったん我が家の客と認めると、見違えるくらいに従順になります。
★集団で走る時の注意
乗馬トレッキング・ツアーに参加する場合、気をつけなくてはならないのは、参加者の技術に差があるということです。全員が乗馬の経験がほとんどない場合はいいのですが、多少乗馬の心得があって、しかも「草原に来たからにゃ走らなソンソン」と思っているような自称「暴れん坊将軍」の方は気をつけてください。
馬は集団性の強い動物です。前の馬が走ると、後ろの馬もつられて走ってしまいます。後ろの馬に乗っているのが経験の浅い人だったら、急に走り出した馬を制御できずに、バランスを崩してしまうこともあります。乗馬経験の多い人ほど周囲の様子に気を配る余裕がほしいものです。
また、怖いからといって集団から遅れることも危険です。群れから離れた馬は、不安になって群れに追いつこうとします。当然スピードが上がることに。離れすぎないよう、ほどほどの速度は保っておきましょう。
こんなふうに書くと、「モンゴルの馬は怖いのね」と思われるかもしれませんが、だいたいの場合、乗り手の技量に応じた馬を与えてくれるので、それほど心配する必要はありません。
要するにマナーよく、怖がらず、みんなで協力し合って進んでいけば、馬の旅ほど楽しい
旅はないということなんです。
★ そのほか
柵も景色を遮断するような建物も何もない草原で走るのは、最高に良い気分です。ついついスピードもあがりがちです。疾走中に心に湧き上がる、言いようのない興奮は、もしかしてワタシの中にも騎馬民族の血が流れているのではないかしらんと思えるほどです。
とはいえ、いくらタフなモンゴルの馬でも、走りっぱなしでは、四肢や心臓にかかる負担が大きすぎます。自分の乗っている馬は牧民から借りている馬で、牧民にとって馬は、かけがえのない財産であり、友であるということを、心の隅っこのほうで覚えていてください。
並歩で馬を進めながら、まわりの景色を楽しんだり、足もとの花を眺めたりするのも、結構楽しいものです。それにゆっくり行けば、それだけ発見も多いはずです。キノコをみつけたり、同行するモンゴルの人たちと歌を歌ったり、言葉のやりとりをすれば、旅の思い出も、より深くなることでしょう。
馬上で心豊かになる、そんな経験が、モンゴルではできるはずです。
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